日本野球機構(NPB)はセ、パ両リーグの公式戦、交流戦の日程を発表したが、オールスター戦の日程はまだ発表していない。球宴期間(7月21日〜25日)の予定が空白となっているのは、当初予定の2試合から、3試合になる可能性が浮上しているからだ。
2002年以来、2試合だった球宴の試合増が検討される背景には、選手年金の存在がある。1964年に始まった現行の選手年金制度は、低金利に伴う運用難で約52億円の積み立て不足に陥った。税制上の優遇措置は法律で12年3月末に廃止される。現行の給付水準を保つにはNPBが毎年、拠出している約5億円を大きく上回る巨額な資金が必要になる。4年連続赤字決算のNPBには難題で、年金の解散は確実になっている。
試算では、OB約800人、現役約800人の加入者全員が、掛け金を上回る分配金を得られるという。ただ、分配金の支払いで、NPBは内部留保の多くをはき出す。解散後、新たな福利厚生制度を構築するには原資が欠かせない。こうした状況から、日本シリーズと並んでNPBの収入の柱である球宴の試合を増やす構想が持ち上がった。球宴1試合制を理想とする日本プロ野球選手会は「アマチュア球界への助成など、広く野球振興にも役立ててもらえるのなら協力は惜しまない」(松原徹事務局長)としている。
しかし、3試合となれば球宴は新鮮味を失う。代案として考えられるのが、日本選手チームと外国選手チームによる対決だ。1995年、阪神大震災の被災者を支援する目的で行った例がある。このときは経費を除いた1億1千万円を被災地に寄付したが、構想には懸念もある。相対的に球宴の価値が低下し、入場料収入や協賛金が減れば、元も子もなくなるからだ。「球宴期間にやるのは難しいのではないか」。セ・リーグ球団幹部は悲観的な見方を示す。
NPBは年金に代わる新たな福利厚生制度を模索するが、具体的な進展はない。候補には私的年金の加入者にNPBが助成金を出す案などが挙がる。年金の専門家は「年金型や養老型といった積み立てタイプの保険が利用できる」と見る。生保と組み、まとまった人数が加入すれば、“オーダーメード”の保険も作れるという。だが、肝心な原資の確保に四苦八苦するのが現状だ。
活躍すれば億単位の年俸を得られるプロ野球界とはいえ、そうした選手は一握りだ。監督、コーチとして球界に残れる者も限られている。選手の多くは、引退してからの生活の方が長い。年金をあてにしていたOBは少なからずおり、9日に東京都内でNPBが行った年金解散にむけた説明会では「大変な問題。生活権の侵害だ」と怒りを露わにするOBもいた。プロ野球OBクラブの黒江透修理事長は「新制度を作るなら、プロに入ってよかったと思えるようなものを検討して欲しい」と次代の選手のために注文をつけた。=おわり
(この連載は浅野英介、小川寛太、神田さやか、佐藤正弘、三浦馨、森本利優が担当しました)
■選手年金 国民年金の上乗せ部分で、企業年金のひとつ。国民年金法上、選手は自営業者だが、球宴でNPBに一時的に雇用されるとの見方から認められた。
1、2軍を問わず10年以上の在籍で受給資格を得る。55歳以降、終身もらえる恵まれた制度で、監督、コーチ、審判員の期間も在籍期間となる。受給額は10年在籍で年113万3千円。15年以上で142万円。掛け金の本人負担額は、一番高い在籍7年目から15年目までが年額12万円。16年目以降は無料。
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引用元:Yahoo!JAPANニュース
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